実験性の生態学

人新世における多種共生関係に関する比較研究

Ecologies of Experimentality: A Comparative Approach to Multispecies Coexistence in the Anthropocene

.

2020~ Kyoto University, Institute for Research in Humanities

http://www.zinbun.kyoto-u.ac.jp/kyodokenkyu/2020_実験性の生態学.htm

The Osaka University UNESCO Chair Global Health and Education (GHE) 近年、新薬の臨床試験や遺伝子組み換え作物の試験栽培が例示するように、科学実験の現場は実験室から社会へと浸透していく傾向が顕著に見られる。この展開の背景には、科学技術への市民参加の拡大や、多種多様なデータ処理技術の急激な進歩など、社会的かつ科学技術的な要因が挙げられる。このような従来の科学実験が閉鎖された空間と時間から、社会全体へと拡大していくという展開を、歴史学者のMichelle Murphyの言葉を借りて言えば、「実験性」(experimentality)と呼ぶことができる。本研究では、この「実験性」において人間と動植物との相互作用がどのように再秩序化されるのかを、国内外の人文・社会科学で近年関心が高まる「人新世」(Anthropocene)と日本で展開している共生研究との対話を通して比較検討する。科学技術への期待やイノベーションの状況が共生そのものの存在論的な基盤となることを人文科学の視点から分析研究するために、本研究では目的を二つ設定する。一つ目の目的は、人間と他の生き物との共生関係をめぐる変遷を描き出す事例の比較研究を重ね、「実験性」における共生関係の政治的、科学的、情動的な結び付きを明らかにすることである。二つ目の目的は、人新世の人文科学における水平的な方法論の展開を受け止めて、実験的な人類誌の可能性を提示することである。