Anthropological Inquiries into Uncertainty, Apprehension, and Responsibility
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2018~ (国立民族博物館)
http://www.minpaku.ac.jp/research/activity/project/iurp/18jr196
子育てや介助、癒やしや看護といった生活の様々な局面におけるケアの実践は、他者との一時的関係から生じる情動によって起動され、集合的な規範によって支持あるいは却下され、社会経済的制度によって保障あるいは排除される一連の係り合いの文脈において把握することができる。いかなる社会も、その成員が必要とする庇護や治癒を提供するための込み入った規範と制度とを備えている。しかし不確実な世界において私たちは、それら規範によって支持される見込みのない心配、制度的な保障を欠いた係り合いに常に巻き込まれている。本研究の目的は、情動と規範との間に生起する係り合いの束が、ある種の秩序/反秩序へと向かう政治的な過程を民族誌的記述として捕捉すること、またそのための方法論の確立である。その民族誌的方法は同時に、ケアに関する複合的な規範と制度、それらを結びつける諸エージェントの働きかけ、およびそこに動員される知識・技術・資源を、ある価値産出的な系として、すなわちケアの生態系として描き出すことを可能にする。