カネとチカラの民族誌:公共性の生態学にむけて

Ethnography of Capital and Power: Towards an Ecology of Publicness

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2018~ (国立民族博物館)

http://www.minpaku.ac.jp/research/activity/project/iurp/18jr199

本共同研究の目的は、「利己性」と「経済」という視点から、公共性概念に関する人類学的な考察を深めることにある。そのために、近年の情報通信技術の発展のもとで営利を追求する諸主体(企業・NGO・個人・コミュニティ等)による実践に焦点をあてる。そして利己的な主体による、生存上の必要(食・住居・教育・医療・福祉等)の充足に関わるやりとりが、公的な領域やネットワークを創発する事例に関する民族誌を比較検討する。これらの検討を通じて、グローバルな政治経済的状況における公共性をめぐる諸問題に対する人類学的な応答の方途を構想する。それは、社会が成立する保証が無い状況から、社会がいかに立ち上がるか考察することでもある。そのために本共同研究では、市民社会やその規範的価値の存在を前提視しえない状況における、①それぞれの生存を追求しようとする多様な主体による利己的な行為に焦点をあて、②物質やエネルギーの移動をともなう相互行為としての経済に注目し、③それが特定の価値や倫理を帯びた場所やネットワークを産出する事態を社会的なものの創発として捉え、その機序を検討することを通じて「公共性の生態学」を構想する。