ケアが生まれる場

家族と社会の境界面の編成に関する人類学的研究:保育と介護の制度化/脱制度化を中心に

An Anthropological Study on the Flexible Interface of Family with Society: The (De)Institutionalization of Parenting Service and Nursing Care

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2014~ (国立民族博物館)

http://www.minpaku.ac.jp/research/activity/project/iurp/14jr166

本研究は、保育や介護をめぐるケアを、家族と社会の境界面でやりとりされるサービスととらえ、その制度化/脱制度化のありようを、比較研究するものである。この分析を通して、人間社会は、社会と家族のインターフェースをどのように編成してきたのか、それは今後どうありうるのか展望する。子供の保育や老人・病人の介護などのケアと呼ばれるサービスは、その一部を家族の外部で、家族外の担い手によって行なうことが可能であり、制度化もされている。このサービスを公的な支援として行うのが福祉であるが、今日、その制度は見直されつつある。福祉国家で脱制度化の動きがみられる一方で、行政の施策が未発達の地域で、ネットワークを駆使した独自の制度があらわれている。『家族に介入する社会』を著したジャック・ドンズロの視点も参照しながら、個別のローカルな状況のもとにある保育や介護の、制度化/脱制度化をとらえて比較検討する。背景には、現代世界の社会像はどのように構想されるのか、という問題関心がある。社会という考え方そのものが曖昧になっている現代世界において、それでも社会をつむいでいく人々のいとなみを、人類学はどのように描いていけるだろうか。本研究は、この問題関心を「人々は他者とともに生きる社会をいかにつくっていくのか」という問いとして出発し、ケアに注目し、成果を『ケアが生まれる場——他者とともに生きる社会のために』(森 明子編、2019、ナカニシヤ出版)の編著として刊行。